今泉悠氏インタビュー(2/4)『日本人を美しく見せるための飽くなき追求』
- 出典元:「アナログレコード・コム」
- タグ:ファッション・人物
- 2012.04.07 12:13 by admin
今泉悠氏インタビュー(第二回)
『日本人を美しく見せるための飽くなき追求』
「カッコよく、快適かつ機能的なメガネを作りたい。」これが今泉悠の根幹に流れるシンプルかつ強い欲求だ。そのために日本人の顔立ち、輪郭、肌色、髪の毛に至るまで徹底した研究を行っている。そして彼は、メガネを作る上で大事な「日本人の顔立ち」について、2つのポイントに言及し始めた。
まず1つ目は、鼻筋のスタート地点(メガネの鼻あてが当たる部分)の幅が細いということ。鼻の高い・低いはあまり関係ないというのだ。そのため、彼のメガネは、他の海外ブランドよりも鼻幅を狭め、扁平骨格を持つ日本人がかけてもパーツのバランスが取れるような緻密に計算された設計を施しているという。
そして2つ目。それは、耳のトップから目にかけての傾斜(角度)が急であるということだ。素人は、凹凸の少ない日本人は傾斜が緩いデザインの方が合っていると勘違いしてしまいそうだが、これは完全なる誤解であり、まったく逆とのこと。傾斜がある分、横顔を描く直線と曲線には自由度が生まれ、左右を横断するメガネの腕のラインにこそ、デザイナーの裁量が問われるというわけだ。つまり、彼が最も力を入れるのは横顔。様々な角度から横顔を研究し、メガネの腕をデザインするのだ。どこからが直線で、どこからが曲線なのか?もはやその概念は彼にはなく、直線に見える曲線を目指しデザインの試行錯誤を繰り返すこともあるという。
このような、日本人の顔立ちに対する飽くなき追求とデザインへのこだわりは、彼の純粋で熱い性格と地道な努力によって形作られる。
そして彼が最も追求するのは、フィッティングの感覚と体験である。重視するのは、メガネをかけた時の心地良さや顔立ちを魅力的に見せることだけではない。それを取った時のハッとする素顔感までイメージを膨らませて作品を作り出すのだ。インタビューの間、解釈しがたい発言がひとつだけあった。「メガネをかけているようでかけていない。そんな感覚に今一番興味があるんです。」一体どういうことなのだろうか?彼の真剣な眼差しは決して忘れられないほど強いものであり、新たな作品の誕生を予感させるものでもあった。