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ところで、これまた余談であるが、わたくしは、過去に、随分貧乏してきたから、貧乏というものは嫌いである。貧乏そのものは何とも思わないが、貧困に由来するもの、つまり「貧ゆえの」という感じがやり切れない。

 

地下鉄なぞという愚劣なものには一生乗りたくない。国電もいやだ。タクシーさえも大嫌いである。折り畳式の蝙蝠傘、和式便所の蓋、電話の呼び出し、熱海へ一泊旅行に出かけた隣の小母さんから、小田原かまぼこのおみやげを貰うこと、プラスチックの麻雀牌、こういうもの一切が、わたくしは大嫌いだ。そこで、ビートルズ・ルックであるが、やはり下層階級の流行である。その、キューバン・ヒールのブーツも、ビニールの奴なんかを売ってる店がある。これは、ビニールのスキー靴と同じに悲しいものだよ。

 

伊丹十三 / ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)

 

 

あわせてお読みください。「不幸が人間を美しくするというのは、嘘である。」モーム

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シャネル代表はロミー・シュナイダーでありますが、この人はよほど趣味の良い人であるように思える。とてもオーストリア人とは思えない。私は「ボッカチオ’70 」という映画で、初めてこの人がシャネルを着たところを見たのですが、いや、これは見事なものであった。なるほどシャネルとはこういうものなのだな。女がいい服を着るというのはこうことなのだな。そういうことが実感としてわかったような気がしたものです。

 

女たちよ! (新潮文庫) /伊丹十三

それは、自動ピアノの扱い方を書いたものと同じきちょうめんな字体と緑色のインク、同じようにきれいな字くばりで書かれていた。彼女は指先できちんと手紙を折ってブラジャーの下に忍ばせ、限りない感謝の気持ちと、絶対にほかの誰にも明かさないで、という願いをこめたまなざしをアンパロ・モスコテに送った。

ガルシア・マルケス「百年の孤独」

ガブリエル・ホセ・ガルシア=マルケス

Gabriel José García Márquez1928年3月6日 – )は、コロンビア作家小説家。架空の都市マコンドを舞台にした作品を中心に魔術的リアリズムの旗手として数々の作家に多大な影響を与える。1982年ノーベル文学賞受賞。

(wikipedia)